人口が減っている街では、駅前の店も減っていく。なんとなくそう思われていますが、実際にどのくらい違うのでしょうか。そして、何が少なくて、何は変わらないのでしょうか。
国勢調査の市区町村ごとの人口の増減と、全国1,882駅の徒歩10分以内にある店の数を突き合わせてみました。
数え方
- 人口の増減:2020年の国勢調査で、2015年から2020年の5年間に人口が何%増えたか(減ったか)。駅が属する市区町村の値です(東京23区や政令市は区ごと)。対象の駅は520の市区町村にまたがります
- 店の数:駅の代表地点から半径800m(徒歩10分)以内に、OpenStreetMapで登録されている店や施設の数
- 地価:駅から1.6km以内の住宅地の地価公示(2026年)の中央値と、前年からの変化率
市区町村の値なので、同じ市の駅はすべて同じ増減率になります。駅のすぐ周りだけ人口が増えている、といった違いは反映されません。
人口の増え方で5つに分けると
駅を人口の増減率の順に並べ、5つのグループに分けました。数字はすべて中央値です。
| 人口の増減(5年間) | 乗降客数 | コンビニ | スーパー | 飲食店 | カフェ | 病院・診療所 | 地価の変化 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| −11.4%〜−1.3% | 17,514人 | 6 | 2 | 21 | 4 | 3 | +1.5% |
| −1.3%〜+1.0% | 22,070人 | 8 | 3 | 31 | 5 | 3 | +3.7% |
| +1.0%〜+3.2% | 24,705人 | 9 | 4 | 29 | 4 | 2 | +4.1% |
| +3.2%〜+4.9% | 31,438人 | 13 | 6 | 38 | 5 | 3 | +6.3% |
| +4.9%〜+19.8% | 38,463人 | 24 | 6 | 109 | 21 | 4 | +9.8% |
人口が増えている街ほど、駅前のコンビニも飲食店も多くなっています。最も増えているグループと最も減っているグループでは、コンビニは4倍、飲食店は5倍の差があります。
ただし、この表には大きな落とし穴があります。人口が増えているグループほど、乗降客数も多いのです。人口が増えているのは東京都心などの大きな駅が多い地域で、店が多いのは、人口が増えているからではなく、単に大きな駅だからかもしれません。
乗降客数をそろえて比べる
そこで、1日の乗降客数が1万〜3万人の駅(1,013駅)だけを取り出して、もう一度比べました。駅の規模がほぼ同じなので、違いは街の人口の動きによるものと考えやすくなります。
| 人口の増減(5年間) | 乗降客数 | コンビニ | スーパー | 飲食店 | カフェ | 病院・診療所 | 保育園 | 地価の変化 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 減っている(−11.4%〜−0.2%) | 15,698人 | 6 | 2 | 19 | 4 | 2 | 4 | +1.7% |
| 横ばい(−0.1%〜+3.1%) | 17,051人 | 7 | 3 | 20 | 3 | 2 | 4 | +3.7% |
| 増えている(+3.1%〜+19.8%) | 18,204人 | 11 | 4 | 30 | 4 | 2 | 5 | +6.7% |
乗降客数をそろえても、差は残りました。
- コンビニは6軒と11軒で、2倍近い差がある
- 飲食店は19軒と30軒。スーパーも2軒と4軒で倍の差
- 一方、病院・診療所は2軒で変わらない。カフェも差がほとんどない
- 地価の上がり方は、+1.7%と+6.7%で4倍の差
同じくらい人が乗り降りする駅でも、人口が減っている街の駅前には、コンビニやスーパーといった日々の買い物の店が少なくなっていました。
病院の数が変わらないのは興味深い点です。人口が減っている街は高齢の人の割合が高い傾向があり(次の節)、医療の需要はむしろ多いのかもしれません。ただ、これはデータから確かめたことではありません。
人口の増減と、住んでいる人の年齢
人口の増減は、住んでいる人の年齢とも強く結びついています。高齢者(65歳以上)の割合で駅を5つに分けると、高齢者の割合が最も低いグループの駅前にはコンビニが24軒、最も高いグループには6軒でした。人口の増減で分けたときとほとんど同じ形です。
人口が減っている街、高齢者の多い街、駅前の店が少ない街は、かなりの部分が重なっています。どれが原因でどれが結果かは、このデータだけでは分かりません。
地方ごとに見ると
人口が減っている市区町村にある駅の割合を、地方ごとに数えました。
全国では28.6%の駅が、人口の減っている市区町村にあります。
目を引くのは近畿です。対象の駅が487駅と多く、大都市圏なのに、半分近くの駅が人口の減っている市区町村にありました。関東の14.4%と比べると3倍以上です。北海道が低いのは、対象の駅の多くが、人口が増えている札幌市の区にあるためです。
人口が最も減っていたのは山梨県大月市(−11.4%)、東京都奥多摩町(−9.2%)、静岡県熱海市(−8.9%)など。最も増えていたのは東京都中央区(+19.8%)で、銀座駅や日本橋駅、月島駅などがここに入ります。
駅選びにどう使うか
引っ越し先の駅を選ぶとき、今ある店の数は駅を見れば分かります。けれど、その店が10年後も残っているかは分かりません。人口の動きは、その手がかりの一つになります。
- 同じくらいの規模の駅で迷ったら、人口が増えている街の方が、買い物の店が多い傾向がある
- 人口が減っている街でも、病院・診療所の数は同じくらいある
- 地価の上がり方にも差がある。家を買うなら、この差は資産の値動きにも関わる
数字を読むときの注意
- 人口の増減は2015〜2020年の5年間の国勢調査の値です。2020年以降の動きは入っていません
- 市区町村の値なので、同じ市の中での違い(駅前は増えていて郊外は減っている、など)は分かりません
- 店の数はOpenStreetMapの登録数で、地方ほど登録漏れが多い可能性があります。人口が減っている地域に地方の駅が多いので、差の一部は登録の多さの違いかもしれません
- 相関を見ているだけで、人口が減ったから店が減った、とは言えません
数えてみて引っかかったこと
人口が増えている街の駅前に店が多い、というところまでは想像がつきます。引っかかったのは病院・診療所で、人口が増えている街でも減っている街でも、数がほとんど変わりませんでした。もうひとつは地域の差で、近畿では駅の48.5%が人口の減っている市区町村にあり、関東(14.4%)の3倍を超えます。
各駅の街の人口の動きと、徒歩圏の店の数は、住みやすさ駅前スコアの駅のページで見られます。