このサイトの記事は、どれも公開されているデータを自分で集計して書いています。お金を払って買ったデータは使っていません。個人でも、公開データを組み合わせれば、全国の駅を同じ基準で比べることができます。
ただ、データごとに、どのくらい細かいか(駅ごとか、市区町村ごとか)、いつの時点か、どんな癖があるかが違います。これを知らずに組み合わせると、もっともらしいのに間違った結論が出てしまいます。このサイトの記事で使ってきた6つのデータについて、何が分かるのか、使うときにどこでつまずいたのかを書いておきます。
一覧
| データ | 分かること | 細かさ | 時点 |
|---|---|---|---|
| OpenStreetMap | 店や施設の位置・種類・名前 | 1軒ずつ | 随時更新(この記事群では2026年9月28日) |
| 国土数値情報(駅別乗降客数) | 駅の1日の乗降客数 | 駅ごと | 年ごと。数年前の値が最新 |
| 国土数値情報(地価公示) | 住宅地・商業地の地価 | 地点ごと | 毎年1月1日時点(2026年) |
| 国勢調査 | 人口、年齢、世帯の形、人口の増減 | 市区町村ごと(細かい集計もある) | 5年ごと(使ったのは2020年) |
| 住宅・土地統計調査 | 家賃 | 市区町村ごと | 5年ごと(2023年) |
| 事業者の公開情報 | ロッカーの場所・料金、購入代行の手数料など | 1件ずつ | 事業者しだい |
1. OpenStreetMap:店を数えるならこれ
世界中の有志が作っている地図のデータで、店や施設の位置と種類、名前が登録されています。誰でも無料で使えますが、ODbLというライセンスに従って、出典(© OpenStreetMap contributors)を表示する必要があります。
使いどころ:駅から何m以内にコンビニが何軒あるか、いちばん近いスーパーはどこか、といった集計。
注意点:
- 登録するかどうかは有志しだいなので、登録の漏れがある。都市部より地方、目立つ店より小さな店の方が漏れやすい
- 同じ種類の店が、人によって違う種類で登録されている。ドラッグストアが「薬局」として登録されていることが多い
- 名前の書き方がばらばら(「セブン-イレブン」「セブンイレブン」「7-Eleven」)
この3つは実際に集計を狂わせました。詳しくはOpenStreetMapで数えるときの落とし穴に書いています。
2. 国土数値情報(駅別乗降客数):駅の大きさを測る
国土交通省が公開している地理のデータの一つで、駅ごとの1日の乗降客数が入っています。CC BY 4.0で、出典を書けば自由に使えます。
使いどころ:駅の規模をそろえて比べるとき。たとえば人口の増減と駅前の店の記事では、乗降客数が1万〜3万人の駅だけを取り出して、駅の規模の違いの影響を減らしました。
注意点:
- 公開されるまでに時間がかかるので、最新の値でも数年前のものになる
- 鉄道会社ごとの値なので、JRと私鉄が同じ名前の駅でも、別々の駅として入っている。合計するかどうかを決める必要がある
- 乗り換えの多い駅は、住んでいる人が少なくても乗降客数が大きくなる。地価の記事で書いたように、乗降客数は「街の大きさ」とは別物
3. 国土数値情報(地価公示):住む値段を測る
毎年1月1日時点の、決められた地点の土地の値段です。住宅地と商業地が分かれています。
使いどころ:駅の周りの住む値段を比べるとき。駅から1.6km以内の住宅地の地点の中央値を使いました。
注意点:
- 地点は街の中にまばらにしかない。地点が少ない駅では、1地点の値で結果が動く
- 商業地を混ぜると、駅前の繁華街の値段に引っぱられる。住む値段を見たいなら住宅地だけを使う
- 東京都心は極端に高いので、平均を取ると都心に引っぱられる。中央値や順位を使う方がよい
4. 国勢調査:住んでいる人を知る
5年に1度、日本に住むすべての人を対象に行われる調査です。e-Statから、市区町村ごとの集計表をダウンロードできます。
使いどころ:若い人や一人暮らしの割合、高齢者の割合、5年間の人口の増減。
注意点:
- 市区町村ごとの値を使うと、同じ市区町村の駅はすべて同じ値になる。「駅の周り」の人口ではない
- 調査の年の値なので、その後の変化は入っていない
- 表ごとに、年齢の区切りや「不詳」の扱いが違う。割合を出すときは、分母に「不詳」を含めるかを決めておく
5. 住宅・土地統計調査:家賃の目安を知る
5年ごとに行われる、住まいについての調査です。市区町村ごとの家賃(1㎡あたり)が分かります。
使いどころ:地価だけでは分からない、借りて住む値段の目安。
注意点:
- 古い物件も新しい物件も含めた平均なので、駅前の新しい物件の家賃より低めに出やすい
- 小さな町村は集計されていないことがある
6. 事業者の公開情報:データが無いところを埋める
コインロッカーの場所や料金、購入代行会社の手数料のように、国のデータには無い情報は、事業者のWebサイトから集めました。
注意点:
- 形式が予告なく変わる。 2026年9月、ロッカーのデータの大部分を頼っていた事業者の形式が変わり、データが読み取れなくなりました。振り返りの記事に書いたとおり、これがサービスを閉じる理由の一つになりました
- 利用規約で、自動での取得を禁じているサイトもある。集める前に規約を読む
- 数字の意味が書かれていないことがある。ロッカーの台数の値が、実際の扉の数と合っているかは確かめられませんでした
組み合わせるときの3つのルール
これらのデータを組み合わせてみて、次の3つを守らないと簡単に間違った結論に行き着くと分かりました。
- 細かさをそろえる。 店の数は駅ごと、人口は市区町村ごと。この2つの相関を見ると、実際には「市区町村の違い」を見ていることになる。結論を書くときはそれを断る
- 時点を書く。 2020年の人口と2026年の地価と2026年の店の数は、同じ時点の街を表していない。記事にはそれぞれの時点を書く
- 規模の違いを取り除く。 大きな駅はたいていの指標で大きな値になる。何かと何かの関係を見るときは、乗降客数が同じくらいの駅どうしで比べ直す
どれも当たり前のことですが、実際に集計していると、つい忘れてしまいます。このサイトの記事では、各記事の冒頭に「データの時点」を、最後に「使ったデータ」と限界を書くようにしています。